高松高等裁判所 昭和27年(う)892号 判決
尤も職権に依つて調査すると原判決が証拠として引用する原審第四回公判調書中の原審相被告人山本岩吉の供述記載については同調書が調書末尾署名の裁判長と同公判に列席の裁判長の氏名が相違して居り、孰れの裁判長に依り公判が開かれたかこれを立証するに由なく同調書は所詮無効と認めざるを得ないので右山本岩吉の供述記載を採つて以て証拠とできないことが明かであり原判決はこの点訴訟手続に法令の違反があるのみならず採証の法則を誤つた違法もあるものといわなければならない。しかし記録に依るとその後第八回公判期日に於て公判手続は適法に更新されて居りその後の手続に何等違法の点は認められないので右訴訟手続上の瑕疵はその後に為された更新手続に依つて最早判決に影響を及ぼさないものと解するのが相当である。勿論無効の公判調書中の前記山本岩吉の供述記載は右公判手続の更新に依つて有効になるいわれはないがこの記載を除いてもなお原判決引用の他の証拠に依つて原判示事実を優に認定できるからこの点の違法も未だ判決に影響を及ぼさないものと認めるのが相当である。よつて論旨は結局理由がない。
(裁判長判事 三野盛一 判事 谷弓雄 判事 合田得太郎)